阪本所長は日本の消費構造が今、劇的に変化しつつあるとみる。少子高齢化に合わせて年代別の人口構成が激変するからだ。
日本の人口を「50歳以上」と「50歳未満」の二つに分けて、それぞれのシェアを比較すると、高齢化が進み、現在、ちょうど二つが半々になっている。高齢化はこの先も止まらないから、この先は「50歳以上」のシェアが増えるばかりとなる。2060年に向けて約6割まで上昇し、それは約100年後の2110年でも変わらない。
「私は50代以上を大人世代と呼んでいますが、モノを買うボリュームゾーンは大人世代という時代が、もうそこまで迫っています」
となると、企業も人口構成の変化に対応して、ビジネスの形態を変えていく必要がある。しかし、パナソニックのように大人世代向けの試みをしている企業が多いかというと、必ずしもそうでもない。
例えば旅行業界。京都を訪れる日本人観光客のうち約4割が50代以上の女性だ。子育てを終えて自由になった、これら大人女子たちが京都や金沢などへ大勢出かけていることは、昨年、本誌で報じた(18年11月16日号)。
しかし、旅行業界に詳しいマーケッターはこう嘆く。
「さらに大人女子に旅行を売り込んでいこうとする姿勢は、業界全体では感じられません。PRで力を入れているのは、相変わらず30代シングル女性向けのものが多い」
世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは、大人世代全体へのPR不足を指摘する。
「不十分でもったいないと思います。これまでの10年はじぃじ・ばぁばが孫のためにモノを買う3世代消費が牽引してきました。これからの10年は、大人女子が消費を牽引していくと見ていますから」
要は企業や業界側のアピール不足で、「売り損じ」をしている可能性があるのだ。
牛窪さんによると、開業する都心の商業施設などに大人女子の新しいコンセプトを提案しても、施設側はなかなか言うことを聞かないという。