「平日の昼間は働いていると繁華街のお店に行きにくい。これだけ共働きが増えると、その時間帯に来店できるのは大人女子ぐらいです。となると、そこを狙った店づくりやコンテンツが必要になるのに、見栄えなどから、すぐ『若向きのほうがいい』となってしまいます」

 かつては20代が圧倒的に多く、トレンドはすべて若者発で、若者を見ていさえすれば流行についていける時代が続いた。さすがに最近は「30~40代」が主力ターゲットになってきているが、それでも「若者志向」は企業現場に根強く残っているという。

 企業のPRに詳しいマーケティング関係者が言う。

「どこまでも30~40代ターゲットを変えない企業が多いですね。大人世代が買っているとなると、『シニア商品』に位置づけされてしまうと恐れているのでしょう。調査で圧倒的に大人世代に売れている結果が出ても、対外的には封印されてしまいます」

 PRすることの効果自体を疑う見方も強い。大人世代は「消費者としては終わった人」という意識があるからだ。

「人口構成の変化は企業も認識しているので、シニア対策が必要であることもわかっているのです。でも、いざ具体策が出てくると、『もう終わった層にお金を投入してどうする』という反対意見が出てきます」(同)

 揚げ句の果ては、黙っていても売れるので積極的なPRは必要ないとなる。

「博物館や美術館が典型です。これらの企画展を支えているのは圧倒的に金も時間もある大人世代ですが、主催者は来てくれない若者たちを呼ぶことにお金を使いたがる傾向があります」(同)

 いずれにしても、大人世代は多くの企業から「軽視」ないしは「放置」されているようだ。しかし、これでは企業側に認識不足があると言われてもしかたがない。一大消費者集団に育った大人世代は、今後は新たなトレンドセッターになる可能性があるからだ。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2019年4月26日号より抜粋

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