団塊の世代が続々70歳代入りしている。リタイア後の男性は趣味に走る傾向が強いが、なお「社会貢献」に取り組む人も少なくない。本格派から身の丈派まで活動は様々だが、共通するのは誰一人「終わっていない」ことだ。世の中と貪欲にかかわり続ける、その姿を追った──。
北九州市では団塊世代がリタイア後に地域貢献に取り組むのを後押しする「生涯現役 夢追塾」を06年から行っている。50歳以上が応募資格。1年単位の研修に毎年30人程度が集まってくる。そして、その卒業生たちの成果が続々と上がっているのだ。
例えば、戸畑区の常光孝一さん(77)は昨年、「80歳からの合唱団」を立ち上げた。
「80歳を過ぎると、さすがに体力が落ちていきます。介護疲れの人や、奥さんを亡くして独りぼっちの人などいろんな人がいる。そんな人たちが集まって楽しめる場所があるといいと思って作りました」
福岡県の合唱連盟理事長を口説いて指導を受ける態勢を整えた。30人ほどかと思っていたら、いきなり75人でスタート。今は約130人まで増えている。月に1回、1時間の練習と談笑会を開く。童謡からフォークまで毎回7~8曲歌う。
「80歳から~」構想は膨らみ、常光さんは春に第2弾として「80歳からのウォーキング」も立ち上げる予定だ。
カリキュラムが一新された年の卒塾生の楠稔幸さん(66)は、生まれ育った若松区を盛り上げたいと2年前、区内の仲間たちと「若松TERAKOYAプロジェクト」を立ち上げた。子供や高齢者が思い思いに集まって交流できる「縁側カフェ」を週3回開いているが、特筆すべきは地元の地域活動家を増やすために「わかまつ寺子屋クラブ」を開催していることだろう。そう、夢追塾の「ミニ版」にほかならない。
「地域デビューの方法や地域の課題発見などやることは夢追塾と同じです。家の中でくすぶっている男性に出てきてほしいと思っていたら、応募した12人中8人が男性でした」