ワイス・ワイスは徹底的に環境にやさしい家具づくりをしている。海外産でも違法伐採された木材は一切使わず、できるだけ国産木材を使う。
立石さんに若いころから可愛がってもらってきたという佐藤岳利社長が言う。
「家具業界も例にもれず低価格競争が続いています。国産材を使うメーカーはあまりなく、どうしても価格が高くなってしまい、現状、経営的には苦労が続いています。それでも歯を食いしばって方針を貫いているのですが、立石さんはそんな私の姿をずっと見てくれていたのでしょう。ウチの前に手伝っていた会社をお辞めになったとき、『最後にお前の会社を手伝ってやるか』と声をかけてくださったのです」
立石さんは毎週開かれる営業会議に出席し、営業マンの話に耳を傾ける。持ち前の人脈を生かして「その会社なら○○さんがキーパーソン」「その関係の情報は○○さんが持っているはず」などと指示を飛ばす。若手の営業マンを連れて会社回りもする。ワイス・ワイスの名刺で各種会合に出るので、それだけで会社の知名度アップにつながる。
当の立石さんは「古いから人を知っているだけ」と謙遜しつつも、
「デジタルだAIだと言っても、最後は人間がやっているんです。それを忘れちゃいけない」
佐藤社長は、できるだけ長く立石さんの指導を仰ぎたいと思っている。
人生100年時代に、70歳やそこらで「終わって」しまっていいはずがない。新大人研の阪本所長が言っていたように、終わったのは「会社人生」だけなのだ。趣味に走っている人も、家でゴロゴロしている人も、いま一度、可能性を試してみてはどうだろう。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2019年3月29日号より抜粋