うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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東京都目黒区で、両親が5歳の娘を虐待で死亡させる事件がありました。女の子が残したノートには、「ゆるしてください おねがいします」といった反省文が書かされていました。死亡したとき、女の子の臓器は一般的な同年代の子どもと比較して5分の1に委縮していたそうです。
また、千葉県で父親が娘を浴室内で殴って死亡させる事件がありました。それについて、父親は「しつけのつもりだった」と話しています。
■しつけとは、子の将来のためを思って成長するように導く行為
当たり前ですが、親のこのような暴力が、しつけという言葉に当てはまるわけがありません。しつけとは、その子の将来のためを思って、成長するように導いていく行為です。
有名な実験で、箱の中から外の餌を取りにいこうとするマウスに、電流を流すというものがあります。マウスは何度も餌をとりにいこうと試みます。しかし、箱の入り口につけた電流の痛みでショックを受け、なかなか餌がとれません。最終的に、何回も電流を流され続けたマウスは、無気力になってしまい、箱の電流を流す装置をなくしても、餌をとりにいこうとはしなくなってしまうのです。
虐待は、マウスではなく、人間である子どもに対して電流を流すのと同じ。子どもを「納得させて」ではなく、「恐怖で諦めさせて」行動を支配しているだけです。子どもはどんどん無気力になり、諦めることばかり覚えていきます。これは子どもの未来をよりよくするための「しつけ」とは真対極の位置にあるものです。
人間は、言葉というコミュニケーション手段をもっています。問題が生じたら、話し合いで解決していくべきです。それにも関わらず、一方的な暴力で従わせることは、親が目先の感情でしか動けない「動物のレベル」なのだといえるでしょう。目黒区の事件のように、子どもに「許してください」と言わせている親自身が、本来は子どもに謝るべき立場にいるのは、客観的にみて一目瞭然です。