認知症の方が自身で口腔ケアを行うのは難しいもの。口の中の汚れをしっかり落とせているかどうか、ご家族がチェックしてサポートしてあげることが大事です。「口から考える認知症」と題して各地でフォーラムを開催するNPO法人ハート・リング運動が講演内容を中心にまとめた書籍『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』では、東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野助教の中山玲奈歯科衛生士と同分野教授の古屋純一歯科医師が、正しい口腔ケアについてQ&A形式で解説しています。
【イラスト】要介護高齢者向けの口腔ケアグッズってどんなものがある!?
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Q 口腔ケアは、認知症の人(本人)に任せてよいものでしょうか?家族はどんな口腔ケアを行えばよいのでしょう。
A 歯ブラシを適切に歯に当てるのは意外と難しく、空間認知や細かな手指の動きが求められます。一般に、認知機能の低下に伴って、口腔のセルフケアが低下することが明らかとなっています。よって、認知機能低下がある場合には、本人に任せっきりにするのではなく、家族や介護者などがまず口腔をチェックすることが大事です。そして、明らかに以前よりもセルフケアができていないと感じたら、一度、歯科の診察を受けることをおすすめします。
一方で、認知症の方の口腔ケアについても、自立支援はとても大事です。「歯磨きをやってあげる」ではなく、できることは本人にやっていただき、それを補助するような形で口腔ケアを支援しましょう。具体的な口腔ケアの支援方法などについては、歯科医師や歯科衛生士によるアドバイスを受けるとよいでしょう。
Q 歯科医師や歯科衛生士が行う専門的な口腔ケアは、何が違うのでしょうか?
A 歯科医師や歯科衛生士は、口腔衛生と口腔機能の両面から口腔を管理(ケア)します。自分自身や介助者では難しい箇所の口腔清掃を徹底的に行うことで、在宅での日々の口腔ケアを簡便にしています。さらに、歯科医師や歯科衛生士が専門的な口腔ケアを定期的に実施することで、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができるのです。
また、汚れがたまりやすいう蝕(虫歯)をつめたり、揺れている歯を抜歯することで、日々の口腔ケアが行いやすい口腔の環境整備を行います。さらに、口の動きや咀嚼・嚥下などの口腔機能も評価することで、口腔機能の維持向上のために必要な訓練などを実施・提案します。
専門的な口腔ケアに加えて、適切な歯科治療を行うことで、食事をしっかり食べることができるようになったり、会話しやすくなるなど、生活するうえでの楽しみや喜びを支えます。