その頃は静岡にいて、東京大学と聞いても漠然としていて名前しか聞いたことがない私には、東大ははるか遠い存在でした。さらに先生や友達が「絶対無理」「受からないよ」と連呼してくるため、自分の中でも「本当に受かるのだろうか?」という疑問が、ちょくちょく湧いてきました。
勉強に限らずですが、なにかに挑もうとしているときに、「絶対できる」と信じている人と、「できないかもしれない」と不安を抱いている人では、やる気も行動力も驚くほど違ってきます。最初から「できないかもしれない」と疑ってかかる人は、「できなくても仕方ない」「少しランクをさげてもいいか」と自分を甘やかす保険の言葉で、つい怠けてしまいます。この間に、猪突猛進でがんがん行動している人とは、どんどん差がひらいていってしまうのです。
■想像以上にたくさんいる東大生を見て「自分にもやれる」
そんなときに有効なのは、「自分にもできそうだ」と思えるような環境に入れることです。私は、母親に東大の文化祭に連れていってもらいました。そこで見たのは、想像以上にたくさんいる東大生たちでした。出店で食べ物を売っているのも、歩いているのも、食べているのも全員東大生。このとき自分は、「ああ、こんなに大勢の人が受かるなら、私も受かるかもしれない」と思ったのです。地方の高校でぼんやりとしか想像できなかったものが、一気に現実として身近なものになった瞬間でした。そのように、子どもに、「自分にもやれるかもしれない」という思いを抱かせる環境に連れて行くことこそ、親にできる最大の手助けだと思います。
最初から「できて当然と思える環境に入れる」というのも手です。私の夫は、ほとんどの生徒が東大に入るような「開成高校」にいました。すると、自然に「自分も東大に入って当たり前」と思うようになりますし、普通なら多いと思えるような勉強量も、周囲も皆やっていると当たり前に感じます。ここの生徒たちにとって、高2の時点で高3の模試を受けるのも、普通のことなのだそうです。おまけに、東大に入るための情報もたくさんはいってきます。