「抗がん剤などの副作用や、関節リウマチなどの自己免疫疾患でも生じることがありますが、発症の原因が不明なこともある。後者を特発性の間質性肺炎、肺線維症と言います」
間質性肺炎全体の患者数は1万数千人ほどとされ、10万人あたりの有病者は10人。60代に限ると男性で40~50人、女性で10~20人と高齢者がなりやすい。
「以前はまれな病気と言われていましたが、高齢化が進み、受診する人が増えています」(小倉さん)
この病気がやっかいなのは、進行性で命にも関わるところだ。
「健康な肺は傷ついても、線維芽細胞がコラーゲンを作り出して修復する。ところが、特発性肺線維症になると線維芽細胞ががん細胞のように暴走し、不要なコラーゲンをどんどん作り出してしまう。その結果、線維化が進み、呼吸機能が低下してしまうのです」(同)
北海道での研究では、特発性肺線維症の場合、3~5年で患者の半分が亡くなるというデータがある。5年生存率からみると、“たちの悪さ”は肺がんや膵臓(すいぞう)がんに次ぐほどだ。
「ですが、ようやく光明が見えてきました。肺の線維化を緩やかにする『抗線維化薬』が2剤、相次いで登場したのです」
こう話すのは、治療に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院の吾妻安良太・呼吸器内科部長。その薬というのが、08年に発売された「ピルフェニドン(商品名ピレスパ)」と、15年に発売された「ニンテダニブ(同オフェブ)」。いずれも飲み薬だ。
「ニンテダニブは線維化に関わる三つの分子を、ピルフェニドンはもう少し広くさまざまな分子を抑えるといった働きがあります。2剤とも1年間の肺活量の低下を半分ぐらいに食い止めてくれることが、臨床試験で明らかになっています。予後が悪いデータが出たのは、まだ薬が使われていないときの統計です。今は生存期間が以前より延びている可能性が高いでしょう」(吾妻さん)
副作用としては、ピルフェニドンにはムカつきや吐き気が、ニンテダニブは下痢が起こりやすいが、個人差も。ピルフェニドンは日光に当たると皮膚に炎症が起こる光線過敏症なども報告されている。