肺は生命に不可欠な酸素を取り込むところ。病気になれば、命に関わるケースもある。最近注目されているのが、肺がんや結核、COPD(慢性閉塞[へいそく]性肺疾患)に次ぐ“第4の肺病”ともいえる「間質性肺炎」。高齢者に多く、これまでは治療が難しかったが、新しい薬が登場し、早期にわかれば対応できる。命を守るためにも、見逃さないようにしたい。
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間質性肺炎は、肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用の問題で、知られるようになった。2002年にイレッサが承認されると、この病気による死亡例が相次ぎ、11年までに800人を超えた。
このように副作用によって発症することもあるが、一般的に多いのは原因を特定できない「特発性間質性肺炎」。国から難病に指定されている病気で、その多くが「特発性肺線維症」というタイプだ。
今から5年前にかかったのが、中部地方在住のアキオさん(78)。発見のきっかけは、がん検診だった。
「肺に異常が見られるので精密検査を受けてくださいとの結果だった。60代までたばこを吸っていたし、がん患者が多い家系なので、肺がんを覚悟しました」
だが、CT検査を受けて担当医から告げられたのは、特発性肺線維症という聞き慣れない病気だった。
がんではなかったことに一瞬、安堵(あんど)したものの、説明を受けると、目の前が真っ暗になった。
「予後が悪い病気で、生存期間は3~5年。説明に使っていた資料には、生存率が右下に急下降するグラフが描かれていました」(アキオさん)
肺にはブドウの房のように、小さな袋がたくさんある。毛細血管から二酸化炭素を放出し、空気中から酸素を取り込む「肺胞」だ。その肺胞の壁にあたる「間質」に炎症が起きるのが間質性肺炎。さらに重症化して線維化が起こるのが肺線維症だ。ウイルスや細菌の感染などによって発症する通常の肺炎とは別モノだ。
神奈川県立循環器呼吸器病センターは、15年に日本で初めて間質性肺炎センターを設置した。小倉高志副院長はこう言う。