「絶対的エースという頼れる存在です。ああいう体操をしたいなと思います。東京に出るには、やっぱり同じくらいまでいかないといけない。力をしっかりつけて、一緒に出たいです」

 新星の北園だが、男子体操界は今や“戦国時代”。個人総合においては、内村ですら東京五輪出場への道は平坦(へいたん)ではない。

 まずは“ひねり王子”こと白井健三(22)がいる。ゆか、跳馬のスペシャリストとしてリオ五輪に臨み、跳馬で銅メダル。18年11月に初開催された、個人総合国内トップ選手12名による「2018男子個人総合スーパーファイナル」(内村は不参加)では、ゆかと跳馬でトップの点数を出して優勝した。

 ほかにも、同年10月の世界選手権で白井を上回る6位に入った萱和磨(22)がいる。同年4月の全日本選手権で内村と白井を抑えて史上最年少優勝を果たした谷川翔(19)、内村らとともにリオ五輪団体を制した田中佑典(29)、加藤凌平(25)も忘れてはならない。

 さらに、前述の「スーパーファイナル」で白井と3位の萱に割って入ったのが、北園の先輩でもある清風高校3年の三輪哲平(18)だ。昨年のインターハイ個人総合王者は、跳馬で大技・ロペスを決め、鉄棒でも着地をピタリと止めるなどの高校生らしからぬ演技で、上位3人に与えられる今年の個人総合ワールドカップシリーズへの出場権を勝ち取った。

 この「スーパーファイナル」で北園は8位に終わった。先輩・三輪の2位を間近で見ていただけに、悔しさもひとしおだろう。それがまた成長につながる。

 2019年は、4月の全日本選手権に焦点を当てる。

「18年はしっかりノーミスでやりきることがあまりできていなかった。19年は個人総合で完璧に演じきれるようやっていきたい。全日本選手権がまず自分の力を出す舞台だと思うので、いい演技ができるようにがんばります」(北園)

 体操男子は“王子たち”が続々と現れ頼もしいが、右足首のけがの影響で18年10月の世界選手権個人総合を欠場した内村も、早期の大会復帰が待たれる。
女子も負けてはいない。世界選手権個人総合では村上茉愛(22)が同種目初となる銀メダルを獲得。得意種目はゆかで、大技・シリバスをもつ“ゴムまり娘”。同大会で逃した団体の東京五輪出場枠に再挑戦するために、今年の世界選手権での活躍が期待される。

 畠田瞳(18)は同年8月のインターハイ女子個人総合で初優勝し、世界選手権にも出場した。父親は1992年のバルセロナ五輪で体操男子団体銅メダルを獲得した畠田好章さん。英才教育を受け、さらなる成長が見込まれている。

 体操界は男女ともスターぞろいで、誰が主役に躍り出るのかわからない。東京五輪で「体操ニッポン」を楽しむためにも、今から目が離せない。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事