2019年を迎え、東京五輪まであと1年半ほどになった。メダルの期待が高まる競技はたくさんあるが、男子体操もその一つ。“絶対王者”が君臨してきたが、期待の新星も現れている。
男子体操は東京五輪で、団体、個人総合ともに金メダルが有力視されている。個人総合では、ロンドン、リオの五輪2連覇、世界選手権6連覇、全日本選手権10連覇の内村航平(30)の存在感が圧倒的だ。その王者に追いつき、追い越そうとしている若手もいて、選手の層は厚い。
期待の新星として輝きを放つのが、大阪・清風高校1年の北園丈琉(たける)選手(16)。まだ幼さが残る顔立ちでニコニコ笑う好青年だ。清風中時代から指導する梅本英貴監督によると、身長は昨年4月から4センチ伸びて150センチになったが、大会直前に「痛い」と話すこともあり、成長痛とも格闘しているようだ。
ダイナミックな開脚旋回が続くあん馬や、力強いつり輪では、小柄な体格や年齢を感じさせない演技を見せる。中学時代の北園の演技を見た内村が「中学生にしてはすごい事やりすぎでしょ」とコメントしたほど、早くから高い技量を身につけており、“内村2世”との呼び声も高い。
小学生の頃から個人総合の6種目(ゆか、つり輪、あん馬、跳馬、平行棒、鉄棒)に取り組んできた。得意種目を尋ねると、「あん馬とつり輪と平行棒。あん馬なら開脚旋回系、つり輪は終末技の伸身ルドルフ、平行棒はダブルハーフ」とすらすらと答える。
そして苦手な種目はないと言い切る。
「全体的にバランスがとれているのが(自分の)いいところ」
1年生ながら清風高校チームの主力を担い、2018年8月の全国高校総体(インターハイ)では団体優勝に貢献。個人総合でも5位入賞を果たした。
「(18年は)高校生になって、清風としてインターハイも全日本ジュニアも戦っていろんな経験ができた。その中で結果も残ってきた一年だったと思います」
北園の実力を世界に知らしめたのが、18年10月、アルゼンチンで開かれた夏季ユース五輪だ。「個人総合で優勝するのが一番。種目別でも金メダルをとって帰るのが目標」と臨んだ北園は、個人総合予選を1位で通過。決勝でも緊張感にのまれることなく、鉄棒など3種目でトップの点数をたたき出して優勝した。
さらに勢いに乗り、種目別のゆか、つり輪、平行棒、鉄棒でも優勝し、5冠達成の快挙を成し遂げたのだ。
「(個人総合は)ゆかとあん馬がいい流れで来たので、『いけてるな』と思ってたんです。でも平行棒で失敗があり、少し気の緩みが出たかなと思います。(5冠の結果は)自信になったし、このまま成長して東京にも絶対に出ようという強い気持ちが芽生えました」
この言葉のように、北園を突き動かすのは東京五輪だ。小学5年だった13年9月、東京が五輪開催地に決定。五輪を見据えてメダリストを多数輩出している名門・清風中に進んだ。前述のユース五輪も「東京の通過点」ととらえている。
あこがれの選手はやはり内村航平。小学4年の時に目にした、ロンドン五輪個人総合金メダルの姿が印象に残っているという。