団塊の世代を先頭に元気な高齢者が続々と登場している。とりわけ目立つのが子育てを終えた女性たちのアクティブぶりだ。旅行、ファッション、音楽……。気に入ったものにはお金を注ぎ込む。彼女たちをより元気にすることこそ日本の消費を活発化させる道なのだ。
20年近く高齢世代の消費をウォッチしている、博報堂「新しい大人文化研究所」(新大人研)の阪本節郎所長が首をひねる。
「例えば観光。インバウンドの外国人観光客ばかりが注目されますが、大事な部分が見過ごされているのでは、と思うんです」
それこそ、50~70代の「大人女子」たちの存在だ。
「確かに外国人は目立ちますが、数でみると1、2割にすぎません。観光地で圧倒的に多いのは、50代以上の大人女子たちです」
観光地は「外国人だらけ」ならぬ「外国人と、大人女子だらけ」と言うのだ。
その実態は後述するとして、阪本所長が注目するのは、彼女たちの活動が非常にアクティブで、新たな「消費トレンド」を生み出しつつあると見ているからだ。
少し説明が必要だろう。阪本所長によると、70代に入り始めた団塊の世代(以下、団塊)を先頭に、これまでの高齢者のイメージとはまったく違った新型の高齢者が登場しているという。
「団塊以前は、日本に若者文化は存在しませんでした。ロック、ポップス、ジーンズ、ミニスカート……。これらは、すべて団塊が流行をつくりました。要するに、若者像の源流を作ったのが団塊なんです。かつて新しい若者文化をつくったように、今度は高齢者像を塗り替えようとしている。団塊の人たちは若々しくて年を取ったと思っている人はほとんどいません。消費で言うと『シニア』と銘打っただけで売れなくなった商品は結構あります。誰も自分のこととは思いませんから」
とりわけ、こうした流れをリードしているのが大人女子だという。
「団塊以降は恋愛婚が主流ですが、今、60代になっている人たちは男女雇用機会均等法(1986年施行)より前ですから、寿退社→専業主婦が一般的でした。夫の世話をし、子育てに精力を注ぎ、ようやく『自分の時間が来た』のが今なのです。解放感が彼女たちを突き動かしています」