確かにそうだ。夫婦の決定権は女性が握っているから、女性が動けば男性はついてくる。郊外のモールなどで母娘が連れ立ってショッピングするのをよく見かけるが、情報の流れは「娘→母」ばかりではあるまい。「母→娘」でファッション情報が伝わり消費に結びつくケースも多い。いずれにせよ、大人女子を躍動させることがカギになる。
売る側も試行錯誤を続けている。
三越伊勢丹のプライベートブランド「BPQC」。恵比寿三越のショップでは、大人女子と同じ世代のスタイリストに人気が集まっている。同じ年格好のスタッフがいると客が話しやすいから、という。当の宮原惠都さん(57)が言う。
「『どのお店で買ったらいいか、わからない』とおっしゃるお客さまが数多くいらっしゃいます。体形とかにお悩みを持たれていて、まずそれをじっくりお聞きすることから始めます」
客にとっては「話を聞いてくれる場所がある」こと自体に価値がある。
「お話やご希望を聞いて同年代の私がコーディネートを提案すると、『だったら試してみようかしら』となることが多いですね」
同年代の悩みは同年代でしかわからない。客側に立った売り方が功を奏しているのだ。
生活家電では、パナソニックが50・60歳代の「目利き世代」向けに14年から「Jコンセプトシリーズ」を販売している。日本のメーカーでは珍しいという。
掃除機や冷蔵庫、洗濯機など7種類ですべて日本製。開発にあたっては徹底的にユーザーの声を聞こうと、のべ3万人以上から聞き取り調査を行った。この世代は冷蔵庫の野菜室を開けることが一番多いことがわかり、真ん中に野菜室を持ってきたり、日本人女性の平均身長から洗濯物を取り出しやすいように工夫した洗濯機などがある。
その家電で最先端になる機能は取り入れるようにしているから価格は安くはないが、「地域専門店を中心に堅調な売れ行き」(コンシューマーマーケティング担当者)という。
どの企業、どの商品が大人女子たちの心をつかむのか。その数が増えるほど、日本の消費は活性化するはずである。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2018年11月16日号