バンドに言わせると、「Wake Up」「Easy Go」の2曲が、本作の基本的なテーマだという。エレファントカシマシの“原点回帰”を最も象徴する曲だが、かつてのままではなく、“今の彼ら”を表現している。確固たる個性を生かし、かつ新味を取り込むうえで、編曲者かつ共同制作者である村山☆潤の貢献は大きかったようだ。
宮本よりも17歳若い村山は、前作『RAINBOW』の制作にも参画。宮本が作詞、作曲したデモをもとに、石森敏行(ギター)、高緑成治(ベース)、冨永義之(ドラムス)とともにレコーディング。その音源を村山(キーボード、プログラミング)が仕上げた形だ。
ディスコ・スタイルのロック、強烈なハード・コア・パンクが目立つ一方で、ダブ的な要素も加味した「神様俺を」にも注目したい。アレンジをめぐって紆余曲折を経た末、村山の発案でレゲエ・スタイルに落ち着いたという。顔に深い皺が刻まれ、薄いごま塩頭で目をショボつかせた“俺”が“神様どうか 俺を見捨てないで 祈りを捧げるから 明日を歩むから”と願う歌。リズム・ギターが小心者の心情を浮き彫りにし、独特の味わいを醸し出す。
デビュー30周年の記念作品として先にシングルとして発表された「RESTART」も“原点回帰”を物語る。ブギをベースにしたハードなギターのリフはじめ、ギター・ロック主体のアンサンブルはダイナミックでパワフルだ。ブリティッシュ・ロック的なテイストも織り込まれている。これまでの足跡を振り返り、“行こう 今日の俺が俺の証 ならばこの場所から RESTART やっぱり勝負をしてみたい”と高らかに歌う。
やはり民放ドラマで使われた「i am hungry」は、豪快でハードなギターを聴かせるシャッフル・ブギ。男気あふれる歌だ。フォーキーな「風と共に」はNHK「みんなのうた」で、スローなロック・ナンバー「今を歌え」はNHK BSのドラマで知られる。「夢を追う旅人」もCMソングで、アルバム全12曲の半数がタイアップ作品となっている。