今やペットは家族。自分に「もしも」があった場合に、備えておくのは飼い主の責任だろう(※写真はイメージ)
今やペットは家族。自分に「もしも」があった場合に、備えておくのは飼い主の責任だろう(※写真はイメージ)
【ペットの信託の仕組み】(週刊朝日 2018年6月29日号より)
【ペットの信託の仕組み】(週刊朝日 2018年6月29日号より)
ネットワークを生かしたNPOのサービスの例(週刊朝日 2018年6月29日号より)
ネットワークを生かしたNPOのサービスの例(週刊朝日 2018年6月29日号より)

「もしも」のとき、ペットはどうなるのか。怪死した「紀州のドン・ファン」は愛犬に“遺産”を残そうとしたらしいが、笑いごとではない。飼育費を積み立てたり、いざというときに頼れる団体や仕組みを知っておくと安心だ。最期まで責任を持ってペットと暮らす方法をまとめた。

【図解】将来のペットの飼育費を管理・監督してくれる「ペット信託」の仕組みとは?

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 東京都千代田区の高級マンションの2階。玄関のドアを開けると、部屋はすさまじい臭気を放っていた。中にいたのは、飼い主の老夫婦に残された17匹のたち。夫は亡くなり、妻は入院。見かねたヘルパーが週に2回、餌と水やりに行っていたがトイレの片付けはしていなかったという。飼育環境の悪化で、数匹が感染症を起こしていた。

 同区で全国に先駆けて猫の殺処分ゼロを達成した一般社団法人「ちよだニャンとなる会」の副代表理事・香取章子さんが経験した「多頭飼育崩壊」の現場だ。17匹の猫たちはいま里親のもとで暮らしている。

 同会はこうした猫たちを引き受け、動物病院と協力し、里親を探す。しかし会は自前の保護施設(シェルター)を持たないため、里親が見つかるまで猫たちを動物病院などに預かってもらうことになる。

「1匹で1泊8千円ほどかかることもあります。このケースでは入院費などで1匹につき25万円ほどかかりました。これでは引き受けるほうがつぶれてしまいます」(香取さん)

 飼い主に「もしも」があったとき、ペットはどうするのか。特に飼い主が高齢の場合、安心してペットと暮らすには、この問題は避けては通れない。

 大阪でNPO法人「ペットライフネット」(以下PLN)を立ち上げた理事長の吉本由美子さんは話す。

「日本でペットを遺棄する年代は60代以上が56%と多い(第34回動物臨床医学会「犬の飼育放棄問題に関する調査から考察した飼育放棄の背景と対策」2013年から)。原因にはシニア層の飼育疲れ、認知症の発症による飼育放棄、独居老人の突然死による遺棄、老人ホームの入居による遺棄などがあります」

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