60年間、まったく軸がぶれてないことが確認できたんです。なすがまま、あるがまま、表現したいままという軸ですね。売れるから、はやっているから、には決して動じない。常識を外れた素材・技法であっても、まずはやってみる。
もちろん、これまでに失敗もありました。でもね、私、行き詰まらないんですよ。頭で考えてたって、答えが出るとは限らない。そんなときは体を動かせばいいんです。
絵を描いてると、よくわかります。途中で「あ、ダメだな」って思ったら、どんな大作だろうと、スパッとやめちゃうの。筆の置きどころがわからずにいつまでもいじり回したって、絶対いいことにならない。仕事も同じです。
絵に気持ちや内面をぶつけると、自分でも思ってもみなかった線が現れることがある。手が頭を通さずに勝手に動くのね。そこからインスピレーションが生まれ、ファッションに生きてくる。
服は、自分に一番近い「環境」。だから、服が変われば、人は顔まで変わってしまう。リラックスできて、どこかきちんとしていて、そしてオシャレ。そんな服を作らなくちゃ。まだまだやることはたくさんあるんです。
人生でやり残したこと? そんなもん、まだやってないだけですよ。
(聞き手/浅野裕見子)
※週刊朝日 2018年6月22日号