「10年ほど前に39階の80平方メートル台3LDKを約5千万円で買いました。当時からよく候補物件を見て回っていましたね。20棟ほど見たところでタワマンに出合いました。高層階で、見た中で一番広く、設備もいい。実は、すでにそのとき、練馬のマンションを買うつもりで、契約書を交わし手付金200万円を払っていました。でも、タワマンに住みたくて、契約を破棄しました。手付金の半分は戻ってきませんでした」
悔しい思いをしたからだろうか、それからはマンション見学が趣味のようになっていったという。
「見たマンションは300棟ほどになるでしょうか。1年で50棟見たこともあります。部屋割りや値付けの特徴など、今では並の不動産マンよりもマンションに詳しくなっていて、見学に行くと業者に間違われることがよくあります」
そうやって見ているうちに数年前、今のマンションに出合った。完成予定の2年以上前だったが、平米単価が「80万円台」で買えた。当時、すでに不動産価格は上がっていたが、
「割安で得、と直感しました。分譲の抽選に2回外れ、ようやく3回目で運を引き寄せました」(Bさん)
49階70平方メートル台の2LDKを約6500万円で手に入れた。前のマンションは買値より2600万円も高い約7600万円で売れ、Bさんは「湾岸マンション富豪」の仲間入りを果たした。そして予想どおり、現在の部屋はすでに「1千万円」程度の含み益が出ているという。
Bさんと違って「あまり勉強もしていない」と言うものの、東京湾岸エリアの48階、70平方メートル台の2LDKに住む会社員Aさん(39)が目をつける物件にも共通点がある。
・高層階(買い替えるたびに階数が高くなっている)
・70~80平方メートル台のファミリータイプ
・ビューの良さ(近くの別のタワマンが目につくような物件は買わない)
「有明も豊洲も、内覧に来た人が眺望を見ると『買います』でした。豊洲の角部屋は夜も来て夜景を確かめていました」(Aさん)
どれもBさんが選ぶ物件とほぼ共通している。要するに売却を見越して、マンションの購入希望者が買いたくなるような物件を選んでいるのだ。沖氏が「10年以内」を時間軸にする理由の一つも、ここにある。中古マンションの購入希望者の多くが「築10年以内」を望んでいるのである。