アベノミクスや金融緩和の拡大で不動産価格は上昇を続けてきたが、歩調を合わせて首都圏で「マンション富豪」が続々と誕生している。自宅を「投資商品」に見立てた資産形成術で、繰り返せば億ションも夢ではなくなるという。いったい、どんな方法なのか。今からでも間に合うのか。
かつて土地神話がまだ信じられていたころ、「住宅すごろく」という言葉があった。それは独身時のアパートに始まり、結婚したら賃貸マンション、子供ができたら分譲マンションと移っていき、最後は郊外の庭付き一戸建てをゴールとする、いわば「住宅出世物語」だった。しかし、人口減少などで郊外の将来性が見通せなくなり、このすごろくは事実上消えた。
代わりに浮上しているのが、「自宅投資」で「含み益」を実現し、より高くより広い分譲マンションに次々と買い替えていく新戦略。不動産調査・コンサルティングを行う「スタイルアクト」社長で、ウェブサイト「住まいサーフィン」を主宰する沖有人氏は、これを21世紀版の「新・住宅すごろく」と名付けている。
沖氏が「自宅投資」をすすめるのは、日本は持ち家促進政策をとっているため、自宅購入だと「金利」と「税制」の両面で優遇措置があるからだ。
「まず金利です。投資用でマンションを買うとローン金利は年3.5%ほどですが、これが自宅購入だと今は0.6%ほどで借りられます。その上に住宅ローン控除による減税がありますから、毎年、ローン残高の1%(上限40万円)が戻ってきます」
不動産の譲渡益にかかる税も優遇されている。投資案件で利益が出ると約2~4割(保有期間の長短で税率が違う)を所得税・住民税で持っていかれるが、自宅だと保有期間にかかわらず「3千万円」まで控除することができる。要するに、値上がり益が3千万円までなら税金がかからないのだ。
いいことずくめのように見えるが、最大のポイントは「値上がりしそうな物件」を探すことができるかだ。しかも、「自宅」だから絶対に失敗は許されない。
サービス業の会社に勤める、同じく湾岸エリアに住むBさん(43)はタワマン二つ目だ。Bさんの物件選びにかける情熱は半端ではない。