動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい猫(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのトゥルコヴィッチの「猫の面に煙」です。
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炭焼き職人が、次々と大きな丸太を担ぎ上げ、豪快に窯に投げ入れていく。最後に火を入れ蓋をすると、側面の空気孔から炎が噴き出し、あたり一面、煙で真っ白になった。
窯に上がるための板を、ご主人を追っていこうとした犬は、慌ててUターン。一方、ご主人の足もとに鎮座していた猫は微動だにしない。猫は煙が平気なのかと諺(ことわざ)など思いながら望遠レンズを覗くと、大量のよだれを垂らしていた。ふとひらめいた「猫の面に煙(意味・動じない)」は、お蔵入りとなった。
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※週刊朝日 2018年4月27日号