80代以上の有病率は100%と言われる「白内障」。唯一の治療法は手術で、その際に眼の中に入れる眼内レンズの選び方で術後の見え方が変わる。週刊朝日ムック『眼の病気&老眼がまるごとわかる2018』では、レンズの選び方のコツを専門家に聞いた。
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手術で水晶体を取り除いた後、眼の中に入れる人工のレンズを眼内レンズという。この眼内レンズは、1種類だけではない。大きく分けて、1カ所にピントを合わせる単焦点レンズと、近くと遠くの2カ所にピントを合わせる多焦点レンズがある。
眼内レンズは、基本的に、一度入れたら一生使うものなので、慎重に選びたい。
「単焦点レンズなら、それまでの見え方に合わせて度数を決めるのが基本。つまり正視と遠視の人は遠くに、近視の人は近くにピントを合わせます」(金沢医科大学病院眼科科長の佐々木洋医師)
「家の中で過ごす時間が長いのであれば、手元から中間距離がよく見えるようにピントを合わせて、遠くのものを見る外出時に眼鏡を使うというふうに、できるだけ眼鏡なしで過ごせる時間が長くなるようなレンズを選ぶと便利です」(杉田眼科院長の杉田達医師)
手術後の見え方については、事前にコンタクトレンズや眼鏡を使ってシミュレーションすることが可能だ。不安な場合は医師に相談してみよう。
■多焦点レンズは自費診療で片目40万~50万円
単焦点レンズは保険適応のため片目で5万~6万円だが、多焦点レンズは自費診療になり、片目で約40万~50万円かかる。ただし、民間保険会社の先進医療特約に加入して利用すれば、自己負担は軽くなる。
多焦点レンズを選ぶと、遠くも近くも見えるので、眼鏡を使う頻度が減る。
「しかし若い頃のように連続的に焦点が結べるオートフォーカスの眼になるわけではありません。やや特殊な見え方をするので慣れる必要がありますし、自分の思った見え方ではないと不満を感じる人もいます。高価だからそれだけでいいと考えないほうがいいでしょう」(稲村眼科クリニック院長の稲村幹夫医師)