今春の京大入試で、大阪府立北野高校が84人の合格者を出し、全国最多になった。同校は、NHKを退局した有働由美子アナらが卒業した名門校だ。洛南(京都)、東大寺学園(奈良)、西大和学園(奈良)などの私立をしのぎ、公立としては近年珍しい京大合格者数トップになった。
北野の京大合格者数は、17年に64人だったが、18年には84人と20人も増えた。76人の洛南や、ともに57人の東大寺学園と西大和学園など、合格者数トップの常連校を上回る実績だ。北野は前年の4位から1位に輝いた(いずれも3月末集計時点)。
1873年創立の北野は、旧制一中の流れをくむ伝統校。関西では、「六稜(りくりょう)同窓会」と呼ばれる卒業生の強い結びつきでも知られる。有働アナは2003年に同校創立130周年記念行事で、「一流を取材して感じたこと ~何がそれを分けるのか」と題し、次のように講演している。
〈私などは一流の北野に入り三流で卒業して、社会人としてアナウンサーとしての成績もビリッケツで、そういう三流だからこそ一流のすごさを伝えることができるのではないかと自分を叱咤激励しています〉
〈北野を卒業して良かったことは、先輩方にいろいろな人を紹介して頂いたことです。同窓生だというだけで皆さん良くして下さるんです。130年の歴史を培ってこられ、そんな中で三流の私を送り出してくださった〉
(六稜会報「創立130周年報告号」の講演要旨)
北野は関西の他府県のトップ公立高校と比べても、安定した進学実績だ(グラフ1、週刊朝日2018年4月6日号などから作成)。昨年の京大合格者は64人で、同じ公立校・膳所(ぜぜ、滋賀)の66人より少なかったが、今年は逆転。北野の卒業生数は約320人で、約430人の膳所より3割少なく、合格者の比率でみると膳所を大きく上回る。
私立に押されていた北野が近年の復権にこぎつけた転機は、2011年度からの「進学指導特色校」の指定だった。日本一の公立高校をめざす「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」として、北野や天王寺など10校が選ばれた。指導方法などについて、10校間で連携したり、競い合ったりして、学力向上を図るとりくみだ。
北野の長年のライバル府立校が、「天高」の愛称で知られる天王寺。18年の京大合格者は前年の43人から63人に大きく伸びた。
阪急十三駅が最寄りで府北部の学生が通いやすい北野に対し、天王寺は府南部の学生が便利な地にある。1896年創立の伝統校。「秀才を誇らず野人を誇る。名門を言わず実力を問う。明朗にして適度に楽しむことを忘れない」との心構えを、生徒に対して掲げるユニークな高校だ。
大阪のGLHS10校の最新の大学合格実績が、グラフ2(週刊朝日2018年4月13日号「全国2375高校主要大学合格者数総覧」などから作成)。大手前、三国丘、茨木が、北野と天王寺に次ぐ実績をあげている。(本誌・中川透)
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