見事合格し春から大学生になるみなさん。大学では高校と違って、自主的に学ぶ姿勢が求められます。大学時代に何をすべきか、東大、京大のトップに聞きました。合格者だけでなく、みんなにとって価値あるメッセージです。
■東京大学総長 五神 真(60)
入学おめでとうございます。
入学試験は大学からのメッセージで、解き、答えることを通じて受験生と対話する機会です。「考える力を鍛える準備ができていますか」というメッセージに応えてくれたみなさんを、新入生として迎えられることをうれしく思います。
いま、世の中はどんどん加速して変化しています。その中で人類が長年培ってきた社会や経済の基本的な仕組みが揺らいでいます。私たちは人々の自由と多様性を大切にしながら、人類全体が調和的に発展する社会を作る必要があります。
この時代にあって、みなさんには変化を恐れず、むしろ前向きにチャンスだと捉えてほしい。そして、知を創造し、多様な他者と一緒に行動しながら、社会に貢献できる「知のプロフェッショナル」になってほしいと願っています。
そのためには、高校までとは異なる学び方が必要です。大学の学びは「まだ答えがない問い」と向かい合うものなのです。
東京大学は新しい学びに切り替える「ギア・チェンジ」の仕組みをたくさん用意しています。
まず「初年次ゼミナール」に積極的に参加してください。東京大学には研究所も含め、さまざまな分野で最先端の研究をしている先生方が大勢います。そうした先生方が1年生のために開講する少人数授業です。本物の研究者の感覚に触れ、研究の多様さと面白さを感じてください。
海外から集まったたくさんの優秀な学生との触れ合いは、世界を知る良い機会となるでしょう。さまざまな国際体験のプログラムも用意しています。積極的に挑戦してください。
みなさんの多くは、これまで日本の社会や学校の中で、一生懸命に学んできたのだと思います。その日本を世界の中で相対化し、その上で、日本ならではの視点をどう生かしていくか、それを考えてほしいのです。グローバル化の流れは止まりません。その中で世界全体をよりよい形に発展させていくためには、世界の多様な知恵をうまく組み合わせることが大切です。