「自分の人生史上、一番幸せな瞬間」。ケガを乗り越え、不死鳥が舞った。平昌五輪のフィギュアスケート男子で羽生結弦(23)が66年ぶりの2連覇。宇野昌磨(20)も銀メダルで続いた。異次元の高みに到達した“ゆづ”が、「僕の武器」というある戦略とは──?
【写真】まさに胸キュンの瞬間!表彰式後にファンを見上げる羽生結弦
やはり、羽生は「絶対王者」だった。
解説者の佐野稔氏が言う。
「ケガで3カ月のブランクからここまで復活したのは、超人的。普通の選手なら試合勘が鈍るなど影響が出るが、羽生に関してはまったく心配していなかった。五輪での勝ち方を本当の意味で知っているのは羽生だけ。色々なアクシデントを経験し、そこから不死鳥のような力強さや粘りを手に入れたと思います」
昨年11月、NHK杯の練習中に転倒し、右足首を負傷。3カ月間すべての試合を欠場し、練習を始めたのは1月。ほぼ“ぶっつけ本番”で臨んだ平昌五輪だったが、現地入りした羽生は落ち着いていたという。
「記者への対応も普段以上に、ニコニコして、開き直っている感じもありました。足首を痛めていたので、フリーはきつい。でも、彼はそういう逆境が実は好きなんです。『弱い自分がいるということは、これから強くなる余地がある』とおもしろがれるメンタリティーがある。万全な状態じゃないけど、それを楽しんでいるという感じに見えました」(朝日新聞スポーツ部・後藤太輔記者)
公式練習後の2月13日の記者会見では、「何も不安要素はない。クリーンに滑れば絶対に勝てる自信がある」と予告していた羽生。
だが、実際にはギリギリの勝負だった。フィギュアスケートに詳しいスポーツライターがこう語る。
「事前練習では跳べていないジャンプも結構あって、内心、焦りはあったと思う。そんな中での『絶対勝てる』発言は、自分に言い聞かせるような意味合いもあったのではないか」
羽生の出身校である東北高校フィギュアスケート部で顧問を務めた五十嵐一弥学園長はこう語る。
「今までの羽生と今回の羽生の一番大きな違いは『目力』。あの『目力』は、今までになかった。この1カ月、カナダのトロントでしっかりと練習してきて、自信を持っている表れなのかな、と感じました」