「ゆづは練習熱心でした。毎日滑っていたし、体力をつけるためマスクをして滑っていた。マスクをすると呼吸が苦しいので、肺活量が上がるらしいんです。でも、練習してても、人には言わないんですよ」
一方で、普通の高校生らしい一面もあったという。「おしゃべりで、どちらかというとボケ役で、私たちが突っ込むという感じ。練習の合間にちょこっと冗談を言ったりする。でも、全然オチがなくて、しらけたり。下ネタを言うこともある普通の男子高校生でした」(後輩女子)
ちなみに、研究熱心な性格は競技以外にも発揮されたようで、高校時代には意外な趣味もあったという。別の後輩の証言。
「ゆづ君の趣味は家電でしたね。見るのが好きで、家電量販店に一日中いられるくらいだった。ゲームも好きで、プレステ2とかを分解して遊んでいたそうです」
前出の五十嵐氏は、同じ高校の先輩である荒川静香と羽生を比較し、「荒川静香は天才少女だったが、羽生結弦は努力型の天才。本当に努力していた」と評する。羽生はアスリート一家に生まれたワケではない。
「結弦君の父も、父方の祖父も教員。特にスケートには縁がない一家だった」(羽生家を古くから知る知人)
羽生の幼い頃を知る親族がこう語る。
「スケートを始めたのは4歳ぐらいのとき。結弦はお姉さんと2人姉弟で、最初はお姉さんがフィギュアスケートをやってたんですよ。お姉さんについて行った結弦は『自分もやってみたい』と始めたんです。その後、お姉さんはやめましたけど、結弦がこんなに立派になって……。涙が止まりませんでした」
人一倍の努力で上り詰めた男は、まだ23歳。ただ、過酷な競技であるフィギュアスケートの引退年齢は早く、浅田真央も26歳で引退した。4年後も五輪の舞台で、史上初の3連覇をかけた演技を見ることができるのか。
「羽生は昨年、取材に対して『誰も跳んだことがないクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を跳びたい』と語ったことがある。今回の五輪には間に合わないとも言っていたので、その夢を実現するまでは、競技を続けていくのではないかと思います」(ジャーナリストの田村明子さん)
(本誌・小泉耕平、上田耕司、堀井正明)
※週刊朝日 2018年3月2日号