被相続人が亡くなる直前まで働いていたり、家賃収入があったりする場合は、収入や支出の状況もまとめておく。相続税の申告・納付期限の10カ月以内よりも早い4カ月以内に行う「準確定申告」に備えるためだ。佐藤正明税理士は「これまでの確定申告書の保管場所を家族に知らせておきましょう」とアドバイスする。

 遺族が払う相続税を減らしたいなら、生前贈与も一つの手だ。

 贈与する相手1人につき年110万円までが非課税になる。被相続人が亡くなる3年以内の贈与は、相続税の課税対象となる点に注意が必要だ。結婚20年超の夫婦間では「自宅の贈与」という特例があり、2千万円分までが非課税になる。ほかにも住宅取得や教育、結婚のための資金を贈与する特例もある。

 適用にはいろいろ条件があるため、税理士ら専門家に相談しよう。生前贈与をするため家族と話すことは、早めに相続準備にとりかかることにつながる。

 生命保険も活用できる。生命保険は受け取った保険金のうち、法定相続人1人当たり500万円まで非課税となる。遺産分割協議がまとまらなくても受け取れるので、残された人はすぐに使えるお金を得ることができる。

 相続税には1億6千万円まで非課税になる配偶者控除や、一定の条件を満たせば被相続人が自宅として使っていた土地を8割引きの金額で相続できる小規模宅地等の特例といった仕組みもある。どんな制度が使えるのか、税理士ら専門家に相談しておくと安心だ。近くの税務署でも事前に予約すれば、無料で相談に応じてくれる。

 遺言がなければ、法定相続分に応じて遺産を分けることになり、遺族の間で不動産などを巡って火種が生じやすくなる。法定相続人が多いと、それだけトラブルも起こりやすい。それぞれが主張し合い紛糾すれば、争いも長期化してしまう。

 作花知志弁護士は「遺言にあらかじめ書いておけば、こうした事態をかなり防ぐことができる」として、作成を勧める。

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