納税は10カ月以内に現金で一括払いするのが原則だ。不動産などを納める「物納」もあるが、評価額は国の基準が適用されるため実勢価格より低め。現金で納めたほうが有利なことが大半なので、納税分の現金を事前に確保しておこう。
資産全体に占める不動産の割合が大きく現金を残しにくい場合は、早めに売却準備に取りかかる。少子高齢化もあって不動産はこれから値下がりする可能性が指摘されており、「安全資産」ではなくなりつつある。
「預貯金など流動性の高い資産が多く残されていればよいのですが、不動産しかない場合は納税のために現金を用意する必要があります。不動産を急に売ろうと思っても、すぐにいい買い手がつくとは限りません。足元を見られて買いたたかれてしまうこともあるでしょう」(佐藤和基税理士)
不動産を処分したくない場合は、将来の納税に備えて、相続人が自力で資金を用意することも検討しよう。現金がないために住み慣れた家を出る。そんな事態に陥らないようにしたい。
これまで相続税は、「お金持ちが対象で自分には関係ない」といった感覚があった。相続税の非課税枠が縮小されたこともあり、納税しなければいけない人は年々増えている。相続で家族がいがみ合うことがないように、万全の準備をしておきたい。(本誌取材班)
※週刊朝日 2018年2月23日号