遺言には通常3種類ある。被相続人本人が自筆する「自筆証書遺言」、2人以上の証人の立ち会いのもとで公証人に確認してもらう「秘密証書遺言」(内容までは公証人は見ない)、被相続人の口述内容をもとに公証人が作成する「公正証書遺言」の三つがある。
佐藤正明税理士は公正証書遺言があれば、争いが起こりにくいという。
「専門家が作るので、必要な記載要件が漏れる心配がありません。自筆証書遺言や秘密証書遺言に求められる家庭裁判所の『検認』も不要。全国の公証役場はオンラインでつながっており、役場に行けば全国どこでも調べてもらえます。一方で、財産の大きさに応じて費用がかかります」
公証人は2月8日時点で全国に495人いて、公証役場は286カ所ある。近くの役場は日本公証人連合会のホームページから検索できる。遺言などの相談会も定期的に開いている。
今の通常国会に提出予定の民法改正案には、自筆証書遺言を全国の法務局で保管できる制度が盛り込まれる。法務局に預ければ検認の手続きは不要になり、オンラインでの検索も可能になる。改正案が成立すれば、自筆証書遺言の使い勝手はよくなりそうだ。
遺言を残す際の注意点として作花弁護士は、法定相続人が最低限得られる「遺留分」(基本的に法定相続分の2分の1)に配慮することを挙げる。それを下回る分しかもらえない相続人は「遺留分減殺請求」をして、権利を主張することができる。
「遺産はどんな分け方をしてもよいのですが、相続人が不公平感を感じるような内容ではやはりしこりが残ります。遺留分は確保した上で、資産の換金のしやすさや生前の介護などでどれだけ世話になったかなどをもとに、相続人全員ができるだけ納得できるように配分するべきです。なぜこういう分け方にしたのか事前に理由や意図を伝えておけば、亡くなった後にトラブルが起きるリスクは少なくなるでしょう」
遺言書の「付言事項」に、相続人への思いや感謝の気持ちを盛り込んでおくこともできる。