しかし、現実はどうやらちがう。『メタボの罠』などの著書がある東海大学名誉教授の大櫛陽一氏は長年、健康診断のデータを分析してきた。「BMIレベルと総死亡率」では、80歳以上は別として、男女とも最も死亡率が低いのは、25.1以上~30.0の人たちだ。
「BMIレベルと原因別死亡率」でも同様の結果になっているが、男性は27.0以上でも、普通体重の範囲内の22.0~24.9よりも低い。
大櫛氏が説明する。
「ちょっとメタボ気味で、小太りの人が一番死亡率は低いのです。むしろ、痩せると、がんや呼吸器(肺炎)、心疾患(心筋梗塞など)の死亡率が高くなります。特にがん細胞はエネルギーを消費するので、栄養状態が悪く、痩せている人は早く体力が奪われる。がんに対する抵抗力は、小太りの人のほうがあるのです」
周囲から白眼視され、日頃から「痩せろ」圧力に苦しんできたぽっちゃりさんには朗報ではないか。それでは、なぜ一番元気な体重クラスの人たちに「肥満」という、病気であるかのようなレッテルが貼られてしまったのか。実はカラクリがある。問題なのは、BMI25~30未満のカテゴリーをWHO(世界保健機関)は「過体重」と定義しているが、日本では「肥満」認定。愛誠病院の新見氏がこう指摘する。
「WHOの基準ではBMI30以上から肥満です。例えば身長170センチの人なら86.7キロ以上になりますが、日本では72.25キロ以上で肥満にされてしまう。私はここに“悪意”を感じます。『肥満』でお金儲けしようという人たちが介入しているのです。本当の健康とは無関係に、設定値を下げれば薬が処方されるケースが増大します」
また、大櫛氏によると、日本人は先進諸国で最もスリムで、BMI30以上になるのは成人(20~74歳)で男女とも約3%しかいない。
「ところが、25以上にすれば約25%の人が該当し、4人に1人が肥満になる。基準を下げたのは、臨床の学会である日本肥満学会です。たった3%ではインパクトがなく、スポンサーの関心が集まらないからです。それに厚労省も飛びついてしまった」