高血圧の目標値も「180/100」→「170/90」→「140/90」と順次下げられ、現在の数値に至っている。加齢によって血管の弾力性が低下し、正常血圧は年齢に伴って上昇する。しかし、年齢にかかわらず「130/85」を目標値にしているため、治療の対象者はどんどん増大している。

「日本人が一番多く飲んでいるのが、血圧の薬です。降圧剤と血管拡張剤を合わせると年間9千億円という巨大市場になっています。血圧は必要だから高くなるのであって、薬で下げると脳に必要な酸素や栄養が行かなくなる。もっと怖いのは血流が乱れることで、血液の流れが滞って脳梗塞を起こしやすくなるのです。血圧が上がる原因は、閉鎖不全弁膜症、貧血、腎動脈狭窄などの病気があります。原因を取り除かなければならないのに、血圧だけ単に下げるというのは、最悪の治療法です」(同)

 基準を厳しくすれば、当然のことながら、患者数は増加し、そのぶん薬剤の使用量も増える。おかげで国民医療費は抑制されるどころか年々膨らむ一方で、15年度は42兆3644億円に上っている。

 また、欧米では肥満を原因とする心疾患で亡くなる人が多いが、日本の死因トップはがんだ。肥満よりも「痩せ」のほうがリスクは高いのだ。いま、身体的機能だけでなく、心理面や社会活動が低下した「フレイル」という状態が懸念されている。メタボばかり悪者にしていたら、国民の健康を守ることはできないのではないか。

 最近になって、従来にはなかった「メタボ」と「フレイル」の健康余命を分析した調査結果が注目されている。昨年10月、東京都健康長寿医療センター研究所が発表したもので、65歳以上の高齢者約1500人を平均7年間追跡調査。要介護状態になったり死亡したりする「自立喪失」の発生リスクを、「メタボ」と「フレイル」で比較、検証したのである。

「フレイル」の定義は【1】6カ月以内に2~3キロ以上の体重減少【2】握力が男性26キロ未満、女性18キロ未満【3】「自分が活気にあふれていると思いますか?」の質問に「いいえ」と回答【4】通常歩行速度が1.0メートル/秒未満【5】外出が平均1日1回未満の5項目のうち、三つ以上該当すれば「フレイル」、一~二つ該当すれば「フレイル予備群」としている。

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