医療情報サイト「MedPeer」の協力を得て、医師を対象に独自に調査した「私の認知症予防法」。医師315人の回答の中から、今回は「認知症予防に効果があると考える取り組み」を紹介しよう。
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最も多かった回答は、運動系の「ウォーキング(有酸素運動)」で265件。8割以上の医師が有効だと考えていた。次点から5位までは順に「会話」(244件)、「パズル(クロスワード、ナンクロなど)」(237件)、「囲碁・将棋」(224件)、「計算ドリル」(216件)と脳トレ系が続く。体と脳を使うことを重視する医師が多かった。
自由記述を紹介すると、「町内会や地域の催し、趣味のサークルなどに積極的に参加する」(一般内科・50代女性)、「段取りを考えて料理を作る」(一般内科・腎臓内科・60代男性)、「おしゃべりから貧乏ゆすりまで、とにかく血流を良くする」(消化器内科・60代男性)などがあった。多くが社会活動(サークルやボランティアなど)への参加や、趣味(語学、読書、旅行など)を楽しむことを、有効と捉えていた。
では、「認知症のリスクを高める生活習慣・病気など」はどうか。
最もリスクが高いものとして挙がったのは「糖尿病」で246件、次が「喫煙」で219件だった。糖尿病や高血糖状態は、記憶をつかさどる脳の海馬という部分の萎縮が進みやすいなど、昨今、認知症との関連が指摘されている。回答の中にも「血糖値を上げないことにつきる」(一般内科・代謝内分泌科・30代男性)という記述もあった。
ほかに、動脈硬化の危険因子の喫煙や肥満、高血圧をリスクと挙げた医師も。「動脈硬化予防で血管性認知症予防は期待できる」(一般内科・腎臓内科など・70代男性)、「動脈硬化予防と大脳皮質萎縮を予防することが最大の効果を発揮すると思われる」(一般内科・感染症科など・40代男性)といった声があった。
今回、医師からはさまざまな取り組みが挙がったが、気になるのは、“最も効果的な方法は何か?”ということではないだろうか。
「何か一つでよいというものはないと思う。組み合わせて行うことが重要」
こう答えるのは、新潟大学医歯学総合病院神経内科の春日健作医師(40代)だ。週に1回認知症外来を担当し、アルツハイマー病の鑑別診断ができる髄液検査を研究する専門家の一人だ。同氏への取材から“エビデンスに基づいた”予防のポイントがわかってきた。
「これまでに認知症やアルツハイマー病の発症予防に関する研究はいくつか報告されていますが、小規模もしくは短期間のものがほとんどでした。2015年にはじめて多数例のMCI(軽度認知障害)の人の研究で、認知機能を改善させることが報告されました」(春日医師)
これが15年に報告された「FINGER」というフィンランドの研究だ。血圧、肥満、コレステロールなど血管リスクが高い被験者1260人(60~77歳)を、運動、食事、脳トレ、血管リスクを下げる対策のすべてに取り組んでもらう群(介入群)と、一般的な健康指導だけの群に分けて、認知機能の推移を比較。2年間調査したところ、介入群は何もしなかった群より認知機能の低下が見られなかったという。