「あの日、あの会見で、満開の桜が真央さんの後ろに見えたんです。最後に去っていく姿は、満開の桜が散って、桜吹雪の中を去っていくようでした」
10月18日から29日まで開催の横浜高島屋での展示会初日には新潟米コシヒカリの「まおむすび」を販売、200個がわずか10分で完売したという。
オープンと同時に会場入りした記者も、出口付近で売られていると知らずに、買い損なってしまった。せめてパンフレットだけでも、と手を伸ばすと、同じような人が横から背後から、チラシだけでも、と受け取っていく。
購入した真央グッズの紙袋を両手に抱えた37歳の会社員の女性に「真央さんのどんなところが好きですか」と話しかけると、瞳がみるみる赤くなって涙ぐんだ。
「いつもひたむき。くじけないですよね。彼女の頑張りが私の原動力」
高島屋宣伝部の担当者は言う。
「ここまで愛されるスケーターは出ないでしょうね」
初めての真央展は2014年に開催した。真央さんがショートで出遅れながらも感動のフリーで挽回、6位入賞をしたソチ五輪の後だ。2週間で18万人を動員し、8階の会場に入ろうと並ぶ人の列は1階まで続いた。
「大変混雑したのにクレームがほとんどなかったんです。いらっしゃった皆さんにとって真央さんは、妹だったり孫だったり、家族みたいな存在なのでしょう。真央さんには、そんな優しさを持てるのでしょう」
二つの会場を取材して、引退してもなお、真央さんに思いを重ねている人がたくさんいる、という実感を持った。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋