ライフネット生命の岩瀬大輔社長(c)朝日新聞社
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2015年以降に発売された主な就業不能保険の比較(週刊朝日 2017年10月20日号より)
2015年以降に発売された主な就業不能保険の比較(週刊朝日 2017年10月20日号より)

働けなくなった時のための保険、「就業不能保険」が話題を呼んでいる。次々に新商品が登場し、しかも売れているのだ。日本人の保険好きは有名だが、何が人々の心をとらえたのか。背景を探ると、現代ニッポンの家族模様の変化が影響している姿が浮かび上がってきた。

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 それは、まるでテレビCMと同じ構図だった。

 語るのは、都内の保険代理店に勤める女性職員である。

「子供が3日後に生まれるという男性だったんですけど、共働きの奥さんに言われたっておっしゃるんですよ。『あなたが要介護状態になって働けなくなったらどうするのよ』って。そのとおりだ、と思われたのでしょうね。紹介者を通じての来店でしたが、即、ご購入いただきました」

 男性が契約したのは就業不能保険。病気やケガで働けなくなって収入が減少した場合に、年金のように毎月、お金が支払われる。

 構図が同じだったというCMは、西島秀俊と渡辺直美が夫婦役を演じたアフラックの「給与サポート保険」のCMである。入院している西島が「医療保険にも入っているから大丈夫だよ」と言うと、子供を連れた渡辺が、

「医療保険じゃ、治療費しか助けてくれないじゃないの。ローンとか子供の教育費とか、どうするの!」

 と迫る。昨年夏から秋にかけて集中的にオンエアされたから、覚えている方が多いだろう。

 いま、保険業界が就業不能保険で沸いている。各社が競うように新商品を出し、それが売れている。

 多くの人が入っている死亡保険は死亡時のリスクを、医療保険は病気やケガをした時のリスクを保障する。ところが、その中間、働けなくなって収入が減った場合の保障は、これまでほとんどなかった。CMが指摘しているように、収入が減っても住宅ローンや教育費は減らない。つまり、就業不能保険は、死亡と医療の「隙間」を埋める商品なのだ。

 辛口で知られる保険コンサルタントの後田亨氏が言う。

「入ってもいい保険であるかどうかは、『重大性』と『緊急性』の二つのキーワードで考えるとわかります。重大性は『自分では用意できない大金が必要になることなのか』ですし、緊急性とは『今日、明日にでも起こりうることなのか』という問題です。就業不能保険は両方に『○』が入ります」

 いち早く目をつけたのは、ネット専業のライフネット生命だった。岩瀬大輔社長によると、2010年に「働く人への保険」として発売を始めたが、売れ行きは伸びなかったという。

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