関口医師も個々の患者の症状を診ながら、投与量などを慎重に判断しているという。
「性ホルモンは多すぎても少なすぎてもダメ。適正なレベルを維持しなければいけません。適正レベルには個人差があり、女性ホルモンが平均値以下でも陰部に何も問題がない人もいらっしゃいます。もっと元気になりたいのか、このままでいいのかを自分で決める時代です。ご自分と対話してみるのが大事です」
出版社の径書房代表取締役で『ちつのトリセツ』などの著書がある原田純さん(68)は、19年1月からテストステロン補充療法を受けている。多忙な日々にプライベートのゴタゴタが重なり、疲れがたまっていたという。
男性不妊症の治療などに使われるテストステロン製剤を毎月筋肉注射する。投与開始1カ月後にニキビが2~3カ所出たほか、「髭が少し濃くなるかも」と言われていたが気になるほどではなかった。いまはテストステロンからDHEAに切り替えるか検討している。
「もともと浮き沈みの激しいタイプで、落ち込むと持ち直すのに最低3日はかかっていました。それがテストステロン補充をはじめてからは一晩寝ると嫌なことは忘れるようになりました。私にとってテストステロンは、人生100年時代のおまじないのようなもの」
と原田さん。
現在は心身共に安定し、65歳で開設したYouTubeチャンネルの登録者数は2万8千人を超えた。
死ぬまで元気でいるためにどんな医療を選択するかは、自分がどう生きて死にたいのか、個々の人生哲学にも関わってくる問題と言える。(医療ライター・熊本美加)
※週刊朝日 2023年2月24日号