関口医師は更年期を迎えたころ、多忙で疲れやストレスがたまっていたせいか、更年期うつに悩まされていたという。ただ乳がんサバイバーのため、再発リスクを高める女性ホルモン療法は諦めざるを得なかった。
「それまで何年も飲んでいた抗うつ剤では改善しなかった症状が約2カ月で消えました。以前から行っていた週2回の筋トレではトレーナーが驚くほど筋肉量が増え、全身の倦怠感もなくなりました。その効果は、まさにうれしい驚きでした」
それをきっかけに、関口医師は外来でフェムゾーン(腟と外陰)の痛みを訴える患者に、「グローミン」という弱いテストステロンを配合したクリームを使うようになった。女性ホルモンの補充だけでは改善しなかった痛みが消えたという。現在、関口医師のクリニックでは、月50人ほどの女性がテストステロンの補充療法を受けている。
「パートナーとの関係性は悪くないのに性欲がわかない。漢方薬やサプリメント、抗うつ剤を飲んでいるのに、元気が出ない、生きる意欲がわかない。そのような訴えがある場合、血液検査で遊離型テストステロンを測定します。1ピコグラム未満の場合は、男性の2分の1の量から補充をはじめ、様子をみながら減量していきます。症状が改善した場合はグローミンの塗布や、DHEAの投与に切り替えます」
■自分と対話して適正水準決める
テストステロンの補充療法は自由診療のため健康保険の適用外だ。関口医師のクリニックでは、性ホルモンの補充は1回数千円という。
「日本では放置すると亡くなったり重篤な症状を引き起こしたりする病気には保険が使えますが、EDやレーシック、AGAなどの予防医学的な治療や、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)アップのための治療には使えません。まずは1カ月で美容や健康にかける金額を設定し、その範囲内に収めるべきでしょう。そうしないと、依存症になるリスクがあります」
気になる副作用はないのか。前出の熊本氏は、
「みなさんが気にされる副作用としては、クリトリスの肥大、ニキビが出る、髭が多少濃くなることがあります。しかし、これらの治療報告をよく見ると、テストステロン量が多すぎるケースばかり。泌尿器科系で扱う類宦官症の治療の場合と同じような量を投与しています。それでは男性化するのも当然。投与量を低く調節しながらの女性へのテストステロン補充では問題はありません」と語っていた。