キレてしまうことの代償は大きい。記者の質問に怒りが爆発した今村雅弘・前復興担当大臣 (c)朝日新聞社
キレてしまうことの代償は大きい。記者の質問に怒りが爆発した今村雅弘・前復興担当大臣 (c)朝日新聞社
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 いきなり烈火のごとく、上司に怒鳴られた。部下に注意したら、逆ギレされた。だれもが、いつ他人の怒りのスイッチを押すかわからない。キレた相手への対処と自らキレないための方策。「お前はクビだ!」「うるさい」などと叫ばぬように、怒りと向き合う術を心得たい。

 東京都内の化粧品卸販売会社でのこと。20代の女性社員が、商品の仕入れ額まで入った見積書を顧客に渡すミスを繰り返していた。見かねた40代の男性上司は、穏やかな口調でこう注意した。

「どうして、こんな単純ミスが続くのですか?」

 すると、「そんなの私だってわかりませんよ! ならば、教えてくださいよ」。女性は突然キレた。

「すぐ感情的になる部下への応対は要注意です」と訴えるのは、人事・経営コンサルタントの増沢隆太氏だ。「今の時代、怒られたことをSNSなどにすぐ書き込む社員もいる。注意した側に落ち度がなくても、悪く言われるリスクを考えてクールな対応が大切」と話す。

 万一、部下がキレた場合、上司は逆ギレせず、放っておくのが一番という。まずは時間と距離を置く。「次の予定があるから」などとその場をいったん離れるのもよい手だ。

「キレて精神が正常でない状態の人に、『まぁ、落ち着け』なんて言えば、火に油を注ぐようなもの。怒鳴るだけでも、今はハラスメントになりうる。訴えられるリスクはどこにあるかわかりません」と増沢氏。部下がキレた場合、まず考えるべきことは自分の身を守ることだと助言する。

 一方で、キレやすい上司が身近にいて、うんざりしている部下も多いだろう。

「これは、あなたの指紋ですよ、ふきなさい!」

 東京都内の会社に勤めていた30代女性は、すぐにゆでダコみたいになる社長に「あぁもう、うんざり」。社長室のデスクに資料を載せる際につく指紋が、どうも気に入らない。加えて、トイレで手を洗った後に垂れた水滴にもキレる。

「ありえないほどの潔癖症。社長にとって、水滴と指紋は絶対に許せないようです」と女性。キレられた後は、いつも始末書を書かされた。

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