授業を実践する浦和高の杉山剛士校長はこう話す。
「授業だけでなく学校行事なども含め、『信頼関係と集団力』で幅広い資質・能力を育成してきた。この伝統的な教育活動がALとして注目を集めているのでしょう。この20年間ほど、進学対策と称して高校教育が捨象してきたことです」
杉山校長は昨夏、忘れられない体験をしたという。
米国の大学などを視察した際、日本の進学事情について「東大に100人以上送り出す高校がある」などと説明した。すると、米ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の担当者から驚かれた。
「そんなことで、大学の多様性は大丈夫なのか」
英米の有名大学は、1校から数人ずつしか採らないのが普通だという。
東大が16年度から始めた推薦入試も、多様性を確保する努力の表れだ。推薦人数が1校男女1人ずつなど、募集内容は発表時に賛否両論があった。少しでも「国際標準」に近づけ、世界と競える大学にしよう。そんな危機感がにじむ大きな変化だった。
こうした動きは東大にとどまらない。国立大学協会も15年9月、推薦やAOなどの多様な入試形態を定員の30%に広げるアクションプランを設けている。
東大の進める入試改革に、受験生側も手探りだ。定員100人に対し、出願者は16年度も17年度も173人。出願校数は17年度に8校増え、159校となった。南風原朝和副学長は「『卓越性』と並び、『多様性』が東大のキーワード。全国の高校は提案型で多様な学生を送ってほしい」と話す。
入試改革とともに両輪で進めるのが、コレフのように教室で進める改革。AL型授業など、高校と大学が連携した研究成果を全国の教育関係者らに発信する。
白水(しろうず)始・コレフ機構長は、高校の授業がAL型に転換すれば、生徒たちの多様な資質・能力をもっと伸ばせるとみる。「例えば法学部ならばこの力が必要、農学部ならばこの力が必要という具合に、多様な潜在的能力を評価する方法を全国の大学と共同研究したい」という。
※週刊朝日 2017年2月24日号より抜粋