東大は推薦入試などで入試を変えるとともに、高校の授業の改善など新たな学びの場づくりも進めている。埼玉県内の高校などと連携して取り組む「高大接続改革」の最新の動きを教育ジャーナリスト・渡辺敦司氏が報告する。
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東大など難関大学に数多くの合格者を出す進学校、埼玉県立浦和高校(さいたま市)。同校などが進める、あるプロジェクトの研究授業が昨年11月、教育関係者らに公開された。
1年生の「コミュニケーション英語I」の授業。議論しながら英語表現を磨く内容で、「浦高生が考える、優れたリーダーに必要な要素とは?」をテーマに話し合った。
この授業の大きな特徴は、生徒同士の話し合いの進め方を工夫していることだ。
南アフリカ元大統領の故ネルソン・マンデラ氏、浦和高卒業生で宇宙飛行士の若田光一氏、米国のドナルド・トランプ氏、の計三つの英文資料を用意。まず少人数のグループに分かれ、それぞれ一つの資料を読み込む。その人物が活躍した時代背景などを考え、リーダーの要素を理解する。
その後、メンバーの一人が別のグループに入って意見交換。これを繰り返し、最後にクラス全体で発表する。少人数での対話を通し、一人ひとりが主体的に学習。その後、各人が学んだことをジグソーパズルのように組み合わせ、全体で理解を深める。熱を帯びた生徒たちは、授業終了後も話し合いを続けていた。
「知識構成型ジグソー法」と呼ばれる、アクティブ・ラーニング(AL)型の授業。開発したのは、東大の大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)だ。英語での略称から、コレフと呼ばれる。
コレフは2010年度から段階的に、埼玉県教育委員会と連携を進めてきた。15年度から5年間の計画で進めるのが「未来を拓く『学び』プロジェクト」。県立浦和高など約100校が名を連ねる。ジグソー法の実践も、プロジェクトの一環だ。
県教委課長時代にコレフとの橋渡し役を務めた関根郁夫・県教育長は「浦高のような進学校から学力に課題を抱える高校まで、少しアレンジするだけで同じ教材を使える。ジグソー法の利点です」と指摘する。