東大の推薦入試や京大の特色入試の合格者が発表された。両大学の新入試はどんな成果があり、どんな高校生が栄冠を勝ち取ったのか。
8日にあった東大推薦入試の合格者発表。南風原朝和(はえばら・ともかず)副学長は学内で開いた会見で、「ペーパーテストでは取りこぼしていた学生を、面接などを通して選抜できた。多様性に寄与している」と強調した。
1時間弱の会見中、南風原副学長を含む入試担当者ら5人から「多様性」「多様な」という言葉が8度も繰り返された。一般入試で測れない資質・能力の生徒が入る手応えとともに、「画一化」を指摘される学内への危機感がにじむ。
合格者の出身校の顔ぶれは興味深い。2月10日17時現在、私立30校、公立26校、国立3校が判明している。
東大の一般入試の合格者は例年、開成(東京)、筑波大附駒場(東京)、麻布(東京)など首都圏の国立や私立の高校が、100人前後を送り出す常連校。これに対し、推薦入試は公立が健闘しているといえる。
これまで東大にあまり縁がなかった高校も増えた。今年度の推薦入試の合格校には、高輪(東京)、駿台甲府(山梨)、小林聖心女子学院(兵庫)、宇部(山口)、高知追手前(高知)など、昨年度の東大合格者ゼロ(含む一般入試)の学校が14校もある。
推薦入試導入による変化で象徴的なのは、学生の男女比。東大の2016年度一般入試の合格者は、女子比率が18%。20年には30%へ上げる目標だが、簡単ではない。「学校基本調査」(文部科学省)によると、全国の大学の学部学生の女子比率は44%。女子が少ない東大は「多様性が乏しい」との見方もできる。
東大は推薦入試募集で、高校1校あたり男女1人ずつの推薦枠を設けている。高校側から不満の声もあるが、今年度も枠を維持した。
河合塾教育情報部チーフの岩瀬香織さんは「推薦枠を設けることで、一般入試と比べて、女子や地方の高校生の志願者の割合が高いと思われます。公表された合格者の数をみると、女子や地方の生徒の割合が高くなっています」と話す。
17年度推薦入試の合格者の女子比率は、16年度一般入試の2倍超の38%。関東地方(含む東京都)以外の高校出身者も、一般入試の約4割に対し、5割を超えた。
駿台予備学校進学情報センター長の石原賢一さんは言う。
「地方では近年、東大に入れる学力があっても、地元の国立大を選ぶ生徒が増えています。経済的な理由や、予備校がなくて浪人しにくい環境の地域が増えていることなどが背景にあります。東大が推薦入試の成果を強調するのは、地方や女子の優秀な生徒を得ている手応えからでしょう」