推薦入試は「学ぶ意欲」が重視される。

東大法学部志望の高校生は、官僚や政治家をめざす人が多い。教員も、そのほうが面接などで知識や意欲を採点しやすい。法学部が定員を超える合格者を出したのは、東大の目にかなうエリートの人材が多かったからでしょう」(石原さん)

 今後の課題は、推薦入試の意義を全国の生徒や教員にどう理解してもらい、志願者を増やすか。今年度の志願者は昨年度と同数の173人。合格者は71人と昨年度より6人減った。

 生徒を推薦した高校は、昨年度より8校多い159校。一方で、昨年度に推薦を出した高校のうち、約3分の2の97校は今年度の推薦を見送っている。

 東大は推薦入試の募集要項で、海外有力大学が入学資格として採用する「国際バカロレア」での成績や科学オリンピックの出場経験などを例に挙げている。こうした例示から、「スーパー高校生しか受験できない」との見方もある。面接対策、小論文指導、部活動の活動実績など、複数の教員が協力する必要があり、高校側の負担も大きい。

 ただ、今年度は新たに105校が推薦者を出した。福田裕穂・理学部長は「むしろ、いろんな高校から応募があったことはとてもよかった」と話す。南風原副学長も「できれば100人の合格者を出したい。もっと積極的に高校に推薦していただきたい」という。

 東大と同様に、昨年度から始まった京大の特色入試は合格者が増えた。後期日程で実施する法学部を除き、今年度は37人増。前出の岩瀬さんはこう分析する。

「京大は高校1校あたりの人数制限のないAO入試が多く、志願しやすい。昨年度は農学部の募集が食料・環境経済学科だけでしたが、全学科に広がりました。工学部や医学部人間健康科学科などの出願要件緩和も志願者増につながりました」

 京大が出願要件を緩和したのは、前回の反省もあったようだ。昨年度の薬学部の募集は「センター試験で900点満点中740点以上」が選抜基準の一つだった。前出の石原さんが言う。

「試験を担当した教員全員が『合格』と判定した生徒が、センター試験でわずかに点数が足りず、不合格となった。そのため、今年度の薬学部は『900点満点中概(おおむ)ね8割以上』と基準を緩やかにしました。東大でも70%台で合格した人もいます。両大学とも全教科で平均的に得点できる学力よりも、“とがった”学生を求めているのでしょう」

週刊朝日 2017年2月24日号より抜粋

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