偏差値や知名度にかかわらず、高い就職実績を誇る大学が存在する。そうした“お得な”大学という観点では、学費にも注目したい。
豊田工業大(名古屋市)は初年度納付金が93万2千円と、国立大の標準額(81万7800円)に近い水準だ。これは、大学の収入の半分近くがトヨタ自動車の寄付によるためだ。
学費が安いだけでなく、教員一人あたりの学生数を示す「ST比」も低い。朝日新聞と河合塾の共同調査によると、同大のST比は10.0で、国立大全体の中央値である12.5より低い。教育力と就職の実績が評価され、現在の入試難易度は難関大レベルになっている。
ST比が低い大学はこのほか、中国地方の伝統校である広島修道大(広島市)などがある。同大の経済科学部は7.9、商学部は10.5で、少人数教育を実践している。
高等教育のあり方に詳しい、筑波大特命教授の金子元久氏(高等教育論)も、大学の教育力を測る指標としてST比に注目する。
「都市圏の難関私大は大規模校が多く、なかには、ゼミに所属しなくてもいい学部もある。国立教育政策研究所の調査では、大規模大学より中小規模大学の学生のほうが、勉強時間が長いという調査結果があります。一般にはST比が低いほど、授業の密度が高く、きめ細かな指導が期待できると言えるでしょう」
就職支援、教育力、資格取得対策など、大学をめぐる状況は大きく変化している。大学全入時代を迎え、地方私大を中心に定員割れが相次ぐ現実が、背景にある。
日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、16年度に定員割れした私立大は、全国577校の44.5%にあたる257校。今後も経営難に陥る私大が増えることは確実。こうした環境のなかで注目を集めているのが、地方私大の公立化だ。