日本老年学会と日本老年医学会の「高齢者は75歳以上」という提言が波紋を呼んでいる。(※イメージ)
日本老年学会と日本老年医学会の「高齢者は75歳以上」という提言が波紋を呼んでいる。(※イメージ)
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 日本老年学会と日本老年医学会の「高齢者は75歳以上」という提言が波紋を呼んでいる。現在、65歳を基準にしている社会保障の制度が多く、基礎年金の支給が始まり、介護保険で原因に関わらずサービスを受けられるのは65歳以上だ。もし実現した場合、その基準も引き上げられるのではないかと懸念されているのだ。さらに、自分で資産を運用する個人型の確定拠出年金(DC)に、今年から原則として誰でも入れるようするなど、政府は社会保障のカットに向けて対策をとっている。

「自助努力」や「自己責任」で人生の後半を築き上げる社会が到来した場合、晴耕雨読の生活や、趣味やボランティアに力を入れる理想の「老後」は夢物語になるのはいうまでもない。

 社会福祉士で『続・下流老人』(朝日新書)などの著作があるNPO法人ほっとプラスの藤田孝典代表理事は「政府は財源がないのでなるべく社会保障の対象者を減らしたい。年金は当てにできず、ずっと働き続けるよう求められる」と警告する。

 実は、いまも日本の高齢者は働き者だ。13年の就業率を国際的に比べると、ドイツは5.4%、米国は17.7%なのに、日本は20.1%。65歳以上の5人に1人は働いている。高齢者の基準が上がれば、さらに増えるのは間違いない。

 働く理由も自己実現のためというより、収入が必要なため仕方なく働いているケースが目立つ。蓄えた資産を取り崩せばいいと思うかもしれないが、持つものと持たざるものとの差は大きい。1億円を超える富裕層がいる一方で、蓄えがない世帯も少なくないのだ。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(13年)によると、貯蓄が500万円未満しかない高齢者の世帯は4割超。そのうち2割弱は貯蓄がないとしている。

 藤田さんは「富裕層もいるので全体でみると貯蓄の平均値は高いが、実際は余裕のない世帯が多い。年金だけでは暮らしていけず労働力を売るしかない高齢者は、いまもたくさんいるのです」という。

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