夫は人間国宝の坂田藤十郎。妻は桐花大綬章も受章した、元参議院議長・扇千景。夫が出した「結婚したら仕事は辞める」という条件を飲み、一度は俳優業を引退した妻だが、俳優どころか、今度は政界に打って出ることになる。
※「扇千景 結婚してすぐに義母にいわれた『外泊どすえ』」よりつづく
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妻:梨園の妻になったわけですけど、しきたりがいろいろあるぐらいで、それ自体は何てことないんです。ただ、私は俳優をして顔を知られてましたから……。
夫:いろいろ言う人はおったな。
妻:ロビーに立っていたら「頭が高い!」って。それじゃあって丁寧にお辞儀したら「顔が見えん!」。どうすりゃいいのよ!(笑)
夫:はははは!
妻:それでも、一度はこの人の言うとおり、俳優業は引退したんです。でも結局、復帰することになって。
夫:映画監督の松山善三さんが脚本を書いたドラマに、この人が出ることになって。
妻:奥さまの高峰秀子さんが出るはずだったんですけど、それが母親の役で。当時、高峰さんは出産経験がなかったから、私にはできない、とお断りになった。それで、ドラマのプロデューサーがこの人と懇意だったもんだから、奥さんを貸してもらえないか?と。辞めろっていうから辞めていたのに、今度は出ろ、って。
夫:そのドラマが芸術祭参加作品で、賞を取っちゃったんです。
妻:1本きりにするはずが、受賞作に出たおかげで次々お仕事が来た。
夫:俳優どころか、ワイドショーの司会までするようになりました。
妻:そのころから、政治には関心があったんです。子供を産んだことで、この子たちのために、戦争のない未来を作らなきゃいけない、と。集団疎開を経験してますから、あんな思いはさせられない、とね。
夫:自分が政治家になりたい、っていうんじゃないんです。平和のためには、政治が安定しなくちゃいけない。だから、自民党の応援をしていたんです。