身体の成長にかかわる成分を含んでおり、子どもには欠かせないが、成人が必要な量はごくわずか。しかも、米や大豆食品などあらゆる食べ物に含まれているため、「あえてアブラとして摂る必要はない」と奥山氏は考える。むしろ摂りすぎは動脈硬化やがん、アレルギー、認知症、炎症など病気の発症の原因になることが危惧される。
「リノール酸の必須量は1日に必要なエネルギーの1%程度だと考えています。数%以上摂るとプラスの影響よりも、マイナスの影響のほうが強く表れてしまうのです」(同)
一方、これまで悪者として扱われていた動物性脂肪は、一時的に血液中のコレステロール値を上げるが、長期的には値は変わらないということが、ビジネスマン研究などから明らかになっている。国内では17年間にわたって脳梗塞の死亡率と摂取した食品成分の関係を調べた「広島成人健康研究」がある。この調査では、動物性脂肪を摂るほど脳梗塞になる危険度が低くなることがわかっている。
こうした研究を受け、日本脂質栄養学会が中心となり、リノール酸が豊富な植物油は減らしたほうがいいという指針を出している。
「ラードやバターなどの動物性脂肪は、長期的に摂っても問題ありません。一方、リノール酸は普段の食事で十分摂れるので、あえて摂る必要はない。リノール酸が多い植物油を使うようなら、同時にαリノレン酸を意識的に摂ること。リノール酸の摂りすぎによる害が相殺されます」(同)
※週刊朝日 2016年12月23日号