4年間に5千人以上の頭髪を診断した毛髪診断士の大川あつ子氏は「女性の薄毛は改善されやすい」と心強い。
「ある女性は薄毛が目立ってきたので増毛したところ、髪の毛がどんどん細くなりました。これは増毛のせいで、シャンプー時に頭皮をきちんと洗えていなかったことが原因と考えられます。汚れがたまると頭皮に負担がかかり、本来の髪を傷める場合もありますから、結局はシャンプーで汚れをきちんと洗い落とすなど、まずは『基本のキ』を心がけることが肝心です」(大川氏)
ウェディングプランナーで司会業の春名久美子さん(仮名・53歳)は5年前、更新した自動車の免許証の写真を見て、がく然とした。45歳で撮影した写真よりも、明らかに頭のてっぺんあたりが薄くなっていた。
司会業も担うので、見た目にも人一倍気を使っていた。春名さんは慌ててヘア専門のセミナーに参加し、改善策を探った。
春名さんは、まず髪の重みによる負担を減らすために、ロングヘアからショートカットにした。それから、市販のシャンプーを植物成分配合のシャンプーに替え、シャンプーで頭皮をマッサージし、コンディショナーを頭皮にこすりつけないような洗髪に改めた。
頭皮の保湿を促したのは自家製の「美肌水」。頭頂部付近の薄い部分にこすりつけてマッサージし、洗髪してからタオルで乾かし、すぐにドライヤーでブローする。
「自然乾燥だと雑菌が付くので、頭皮に汚れが生じるからです。なんだかボリュームが戻ってきました」(春名さん)
大川氏は「毛髪の太さの平均は0.08ミリ。薄毛の人の平均は0.06ミリです。わずかですが、この0.02ミリの差がボリュームの差になるのです」と説明する。
大川氏によると、髪の約9割がケラチンと呼ばれるたんぱく質で作られるので、大豆や玄米、とうもろこし、肉や魚、卵といった良質な動植物性たんぱく質を食事で補うことを勧めている。また、たんぱく質の代謝に不可欠なビタミンB6の食材として、ニンニクや抹茶、ピスタチオ、ごま、きな粉、いわし、干しシイタケなどを挙げている。
さらに、髪のコシやつやにはミネラルが求められ、カルシウムを多く含む桜エビ、ししゃも、ひじき、チーズや、マグネシウムが多い青のり、とろろこんぶ、アーモンド、納豆、油揚げなどが効果的のようだ。
そのほか、抜け毛の原因として、大川氏は亜鉛不足を指摘する。
「牡蠣(かき)やカニ、ココア、ビーフジャーキーなどを取ることで、新陳代謝がアップするでしょう」(大川氏)
仕事や子育てなど、疲れがたまりがちなストレス世代こそ、抜かりのない薄毛対策が必要かもしれない。
(作家・夏目かをる)
※週刊朝日 2016年12月9日号より抜粋