高級化で待ち時間が延びる一方で、82年に時短の画期的な即席麺が生まれた。明星が「クイックワン」を、エースコックが「エースワン」を相次いで発売。時短を追求した60秒ヌードルがヒット商品になった。

 シマダヤの前身、島田屋本店が89年に出した生タイプ麺「真打ちうどん」は、2分。他社も追随したものの、92年に日清が1分の「ラ王」を発売。以降、生タイプ麺は1分待つか、湯切り後すぐ食べられる商品が一般的になった。

 山本さんはカップ麺の歴史について、「時間が短いほど良いとの価値観と、おいしさの価値観。この両者をてんびんにかけて評価するようになったのは、80年代初頭。それ以降、カップ麺市場は成熟化、多様化してきた」と説明する。

 山口大・時間学研究所の織田一朗客員教授(69)は、カップ麺の待ち時間の時代性をこう語る。

「60~70年代に重視されたのは、早く食べられ、エネルギー補給できる効率性。80年代から、そうした効率一辺倒ではなく、自分に合った幸せを追求するなど価値観が転換した。さらに、技術の革新で麺や味などの工夫も進み、カップ麺の多様化を促した」

週刊朝日  2016年11月18日号より抜粋

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