「忍者食」って?(※イメージ)
「忍者食」って?(※イメージ)
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 高い壁を身軽に飛び越え、敵に見つかると手裏剣を打ってドロンと消える──。スパイとして活躍したとされる忍者。主な仕事は、秘密情報を集める諜報活動と奇襲攻撃だったと思われる。ストレスフルな環境で、肉体と精神を維持するために、いったい日ごろどんなものを食べていたのだろうか。その食事から、現代社会にも通じる健康維持のヒントを探った。

 忍者の生活について、研究を進める久松眞さん(三重大学名誉教授)に聞くと、驚きの話が耳に飛び込んできた。何と忍者は、農民だったというのだ。

「農作業の合間に忍者の修行をしたと考えられている。半農半武士のような生活ですね」(久松さん)

 だから普段の食事は、そのころに農民が食べていた内容がベースで“粗食”だったという。

「基本は1日2食で、主食は雑穀類。ヒエやアワの雑炊を主食とし、おかずはぬかを原料にしたみそ、山菜や野草など。バッタや蛇、カエルなども食べていたと考えられています」(同)

 こんな食事で丈夫な体を作ることができるのだろうか。

「今よりバランスは良いですよ。今、私たちが普段食べている白米は、胚やぬかなど大事な栄養素をそぎ落としたもの。最近は雑穀類を主食とすることで、エネルギーの補給だけでなく栄養素を摂ることができる。昆虫・爬虫類・両生類は、タンパク質などの栄養価に富むんです」(同)

 粗食の背景には、忍術のために体重を増やせない事情もあった。身長の基準は不明だが、体重は60キロが限度とされていた。

「忍びのときには跳んだり走ったりするために、常に身軽な状態でいることが鉄則でした。普段から、質素だが栄養価に富む食事で調子を整え、いざというときに備えていたのです」(同)

 飽食の時代といわれる現代。忍者食を取り入れれば、生活習慣病の予防にもつながりそうだ。蛇やバッタはお断りにしても、普段の食事に取り入れるコツはないのだろうか。「エリート忍者の聖地」といわれる三重県伊賀市で、忍者料理を現代風にアレンジして提供している飲食店経営者の藤林孝行さんに聞いた。

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