著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、作家の井上荒野さんが選んだのは、7月から11月中旬に、上質なポルチーニが入荷した時のみ提供される裏メニュー「トラットリア ケ パッキアのポルチーニのカツレツ」だ。
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私は、あまり怒らないんですよ。不機嫌になるとすれば、ご飯がらみだけ(笑)。変に体裁を取り繕ってきれいに並べられているんだけど、印象に残らないような料理が出てくると……。
このお店の料理は、しっかりと訴えてくるおいしいものばかり。特にポルチーニ。普通は乾燥させて料理に使うのに、フレッシュなポルチーニを一本丸ごといただけると聞いて、びっくり。乾燥ものは通年であるけど、こちらは秋の限定。私は季節ものに弱いんです(笑)。まずはホイル焼きをいただきました。
その次に行った時には、カツレツを。フリッターではなく、パン粉の衣をつけて揚げてるんです。ソースはかけず、塩だけで。ナイフを当てるとサクッと入っていき、口に運ぶとポルチーニの香りでいっぱいになりました。ジューシーでエキスがたっぷり感じられて。油から上げるタイミングがいいんでしょう。うまみが凝縮されています。
私の周りは皆、おいしいもの好き。今年は誰と一緒に食べようかと考えるのも楽しみです。
「トラットリア ケ パッキア」東京都港区麻布十番2-5-1マニヴィアビル4F/営業時間:18:00~25:00L.O./定休日:日曜、祝日の月曜
※週刊朝日 2016年10月28日号