夫:そんなこと言ったら、気持ち悪い男が言うかもしれないじゃないと言うと、「わたしが嫌いな男がプロポーズするわけはない」「じゃ、僕が結婚して、と言ったらしてくれるの?」「うん」って。

妻:変わった容姿に惹かれたのかな。二枚目さんは興味ないというか。

夫:うちの親も、結婚することにしたと言ったら、「そう」って(笑)。

――夫は7人きょうだいの末っ子。実家は東京・神田の洋服問屋で、父は後に千代田区議会議員を務めた。しきたりを重んじる家で、夫の存在ははぐれ雲のよう。大学を中退したふたりは、代々木八幡で新生活を始めた。

夫:父親の選挙を応援しようというので、子供たちはみんな千代田区に籍を移すことにしたけど、「よしおは、いい」って。いつもへそ曲がりな態度をとってきたから、他の候補に投票しかねないと危ぶまれたのかもしれない。それで結婚するときも、反対されるだろうと思ったけど、なにもなく。

妻:一度、新宿で大きなデモがあった夜、帰れなくなって、よしおさんの家に泊まることになったのよね。

夫:結婚すると言った後じゃなかったかな。母親が、「どうしましょう。布団は一つ、二つ?」ってあわてちゃって(笑)。

妻:「お風呂は一緒なの?」とかね(笑)。

夫:それから、親同士のお見合いになる。

妻:うちは、顔も見ずにOKでしたから。というのも、わたしは浜町の呉服問屋の、5人きょうだいの末っ子で、すぐ上の姉に顔写真を見せたら「いいんじゃない」って。しっかり者の姉がそう言うならと両親も思ったのか。

夫:しいこは、親に怒られたことが一度もなかったと言うんだよね。

――結婚式もせず、いつ婚姻届を出したかも覚えていない

夫:親同士の顔合わせの席で、おやじが「息子は結婚式はしないと言っていますが、まずいですよね?」と言ったら、しいこのお父さんが「本人同士に任せます」。おやじは、首をかしげていた(笑)。

妻:結婚式は、したいと思わなかった。人前に出るのは恥ずかしいし。

夫:恥ずかしいよね(笑)。だから新婚旅行もせず。婚姻届もおやじが出しに行った。

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