それなら廃炉にすれば済む話だが、もんじゅは国策である核燃料サイクルの象徴的存在。文科省も簡単にやめると言えない。そのせいもあり、「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」では廃炉も含めて広くもんじゅの「在り方」を検討するはずだったが、次第に「運営主体の在り方」を検討する会に矮小化してしまった。
こうしたもんじゅを巡る混乱は、おひざ元の福井県敦賀市にも波及している。
市内にある原電の敦賀原発1号機は廃炉が決まり、再稼働を目指す2号機直下には活断層があると報告されるなど原発産業はじり貧だ。歓楽街の本町にある居酒屋の店主はこうこぼした。
「以前はもんじゅ、敦賀、美浜の原発関係者がよく飲みに来ていたが、原発が止まってから客足が遠のいた。潰れる店も相次いでいます。先日は近所で山口組の抗争による発砲事件まで起きてダブルパンチです」
もんじゅの目と鼻の先にある白木漁港の漁師は「ナトリウム漏れ事故のときには影響が大きかった」としながら、すでに漁業補償をもらっているため、万一の事故で漁獲が減っても文句は言えないと複雑な表情で話した。地元市議が、もんじゅがなくなった場合の打撃をこう心配する。
「敦賀市は原発の町。市の一般会計約250億円のうち約5分の1は、電源三法交付金、固定資産税、核燃料税から入ります。とくに固定資産税は33億円ほどある。仮にもんじゅが廃炉になれば市の税収が減る上、雇用にも大きな影響を与えます」
一方、地元福井の住民らの間では、もんじゅの設置許可取り消しを求める裁判も起きている。原告団の一人、明通寺の住職・中嶌哲演さんらは85年に第1次訴訟を起こしたが敗訴。現在2度目の住民訴訟が東京地裁で進む。その中嶌さんが怒りを込めて言う。