処方される漢方薬は医療機関によって違いがある(※イメージ)
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「からだにやさしい」「副作用が少ない」といったイメージがある漢方薬。近年、漢方薬を処方する医師の数は増えており、西洋医学の薬と同時に処方されることも多くなっている。漢方の処方を専門におこなう「漢方外来」を開設する医療機関もある。

 しかし、処方される漢方薬は医療機関によって違いがあり、大きく分けて「煎じ薬」と「エキス製剤」という形態がある。

「煎じ薬」と「エキス製剤」は、いずれも原材料となる生薬を組み合わせて作られるものだが、工程上、煎じ薬のほうがより原材料に近く、エキス製剤のほうがより加工品に近いという位置づけになる。コーヒーで例えると、煎じ薬がコーヒー豆をひいて作るコーヒー、エキス製剤はインスタントコーヒーのようだといわれている。

 煎じ薬は、医師が患者の体質や症状などに応じて、生薬の組み合わせと、その割合も調節して処方する。患者は毎日、それを煎じて有効成分を抽出して飲む。医療機関によって、保険診療で処方するケースや、自費診療(保険外診療)で処方するケースがある。

 近年は、生薬の輸入価格高騰のため、煎じ薬を保険内で調剤するのが困難となり、煎じ薬の処方を保険診療から自費診療に切り替える医療機関は増えているようだ。

 一方、エキス製剤は、煎じ薬を濃縮エキスにし、さらに乾燥させて作る主に顆粒(かりゅう)状の薬だ。製薬会社が標準的な種類・割合で生薬を配合し、規格が統一されている。例えば「葛根湯(かっこんとう)」という漢方薬は、「葛根」「麻黄(まおう)」「桂皮(けいひ)」など7種類の生薬を何グラムずつと割合を決めて作られている。エキス製剤の処方は原則、保険診療となる。

 自費診療で煎じ薬を処方する漢方緑川クリニック(大阪市)の院長、緑川沢樹医師は、煎じ薬のメリット、デメリットをこう説明する。

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